注文住宅は建売住宅と違い、自分たちで間取りや設備を決められます。そのため、準備から完工までの流れも建売住宅とは異なります。今回は注文住宅を建てる流れと、各工程で重要なポイントをまとめました。
注文住宅を建てるまでの流れと期間
注文住宅は自由度が高い分、建売住宅などよりも多くの手順を踏む必要があります。マイホームを検討中の方へ、注文住宅を建てるまでの具体的な流れと、かかる期間についてご紹介します。
予算計画や住宅のコンセプトをイメージする
注文住宅を建てる際には、まずは予算計画や建てたい住宅のコンセプトイメージを作っておくことが大切です。そうすることで、土地探しや建物の設計に関する条件を絞り込みやすくなります。また、具体的なイメージを固めるにあたって、住宅に関する勉強も必要になります。
予算・住みたい場所・住宅のコンセプトをイメージしておく
まず考えたいのは、予算と住宅のコンセプトです。注文住宅は、建売住宅のように土地と建物がセットになっていないので、土地を決めるのも建物の設計を決めるのも自分たちです。そのため、一つひとつにどれくらいのお金がかかり、どんなものを作りたいか十分に検討しておかないと、迷いが生じて選べなくなることもあります。
まずは予算を決めて、予算に収まるように、土地や住宅の詳細を決めていきましょう。
・予算総額から「諸経費(固定)、建物代、土地代」と決まる
予算総額が決まったら、土地取得費用、建物費用、諸経費などに予算を振り分けます。予算の中には電気ガスや外構工事、調査費用や申請費用、さらには引っ越し費用などもかかってくるため、一覧にして漏れのないようにしましょう。
・建築会社を決めると建物代が決まってしまうのでコンセプトを決めることが重要
建築会社ごとに得意な建築方法や持ち味があり、中心的な価格帯が決まっています。つまり、土地の広さに応じた建物代はある程度は前もって把握できるということです。
建てたい住宅のイメージが固まる前に建築会社を決めて土地探しまで依頼すると、予算総額ぎりぎりで自社の住宅が建築できる土地を探してくるため、予算に余裕がなくなります。
打ち合わせを経て住宅についての知識が備わってきた段階で内装・インテリアや住宅設備を追加しようとしたときに、設計の自由が制限される恐れがあります。
注文住宅の魅力を生かすには、まずは予算とコンセプトを決定し、それに合わせて建築会社を数社選定することが大切です。数社選定するのは、同様のコンセプトでも建築会社によって坪単価にばらつきがあることを考慮し、土地予算に余裕を持たせて土地選びの選択肢を増やすためです。
住宅について勉強する
予算やコンセプトを決めていく段階で、住宅について勉強することをおすすめします。
特にこれからの時代は、設備面について勉強しておくことが大切です。温暖化や異常気象への対策として、CO2を排出しない再エネ・省エネの動きが高まっています。2021年4月からは省エネ性能の説明義務制度が始まり、建築士が省エネ基準を満たしているか説明する義務が課されることになりました。
また、今後電気代が高騰する可能性も考えられ、災害時のエネルギーの確保なども鑑みると、発電システムや蓄電池を利用した電力の自給自足についても一考の余地があります。
こうした住宅や設備の情報を集め、知識を得ておくことで、経済的にも暮らしやすい家が建てられるようになります。
参考ページ:省エネ性能の説明義務漫画(PDF)|国土交通省
土地探し・建築会社を選ぶ
注文住宅のコンセプトが固まったら、それに合った土地・建築会社を探します。土地と建築会社は切っても切れない関係にあり、建設会社が決まると土地探しの範囲も絞られるため、同時に探すことが大切です。期限を区切らないといつまでも決められないため、大体3か月ほどを目安にしましょう。
自分のコンセプトにあった建築会社を探す
建築会社には、大手ハウスメーカーや地元密着の工務店、建築家による設計事務所などがあり、同じコンセプトでもハウスメーカー、地元の工務店などで建物代が異なります。そのため、建築会社選びでおおよその予算配分が決まり、同時に土地にかけられる金額が決まります。
建物の価格が高ければ高いほど土地にかけられる金額は圧迫され、選べるエリアが限定されます。反対に建物の金額を抑えられれば、余裕をもって土地選びができるでしょう。そのため、自分たちのコンセプトを形にできることはもちろん、予算に合った建築会社を探すことが重要です。
土地を探す
自分の足で希望の土地を探し出すのは大変ですし、もし良いと思える土地が見つかっても、建築基準法の制限や規制区域の指定などで希望の建物を建てられるとは限りません。そのため、専門家の視点から土地を見ることが必要となります。
昨今は訪問した建築会社(ハウスメーカー)に、土地まで探してもらうのが主流になっています。土地を探してもらったら、その建築会社に注文住宅の建築まで依頼することが多いので、相談先の建築会社もある程度絞り込みましょう。コンセプト・予算に合った建築会社を選ぶことで、希望の土地も見つけやすくなります。
>>土地探しのコツとは?優先順位、探す方法、ポイントを徹底解説!
建物の間取り・総予算を決める
建物の間取りプランを作成したり、見積もりを依頼したりして、総予算をより具体的に決めていきます。建物の間取りや総予算、自己資金の金額などは、住宅ローンの仮審査提出のためにも必要です。
住宅ローンの仮審査から土地の契約
土地と建築会社の絞り込みが終わると契約に進みます。約1カ月間を目安に、土地の購入に向けたローンの契約や土地の契約を進めましょう。ただし、住宅ローンの仮審査は通らないこともありますし、仮審査が通っても本審査が通らないこともあるため、複数の金融機関に申し込むこともあります。
住宅ローンの仮審査
住宅ローンは本審査の前に仮審査があります。購入の申し込みまでに金融機関へ仮審査の申し込みを行い、承認を受けます。その際には、金融機関の指示に応じて本人確認書類や収入確認書類、間取り図などの物件確認書類の提出が必要です。
複数の金融機関で審査を申し込む予定の場合には、あらかじめ書類のコピーを作成しておくと便利です。仮審査の申し込みは、書類を直接窓口で提出するほか、インターネットで提出する場合もあります。
土地の購入申し込みをする
ローン仮審査の後は、正式に土地の購入を申し込みます。申し込みの際には、宅地建物取引主任者による書面の口頭説明を受ける必要があります。これは宅地建物取引業法で定められていることです。土地の重要事項の説明を受け、購入する土地にかかわる書面を確認しましょう。調べたり担当者から聞いたりした情報と相違点はないか、しっかりと確認してから申し込みをしましょう。
土地の契約をする
土地の購入契約では、一般的に手付金や仲介手数料、印紙代を支払います。契約をした後に買主都合のキャンセルをした場合、基本的に手付金は返ってこないため注意が必要です。手付金は契約によって違うこともありますが、一般には土地代金の約10%となります。
土地代金の残金の支払いは、土地の引き渡しの直前に支払う、建物と一緒にローンを組むなど、いろいろな方法があります。住宅ローンを組む前に土地代を支払う必要がある場合は、つなぎ融資を利用しましょう。
住宅の詳細プラン確定から住宅ローンの申し込み
土地の契約後は、より具体的に建物の設計について考えていきます。住宅の詳細プランを確定させ、住宅ローンを申し込むと、いよいよ本格的に夢の注文住宅の建築がスタートするので、疑問や不安を残さないように進めていきましょう。住宅のプラン確定から住宅ローン申し込みまでの期間は2カ月程度が目安です。
住宅の詳細なプランを決める
注文住宅は、自分たちの暮らしたい家を自由にプランニングできるのが魅力です。家族全員が納得でき、将来にわたって暮らしやすいプランを詰めていきましょう。間取り、設備、インテリアを含めて具体的な内容を決定します。
間取りを決める際は、日当たりや生活動線、リビング含む各部屋の広さなど、ポイントを押さえた検討が必要です。家族構成や子どもの年齢、高齢者の有無など、条件によっても最適な間取りは異なります。
また、キッチン設備のグレードや建材の素材、免震や耐震構造、断熱性能なども細かく絞り込みます。使い勝手と価格のバランス、将来的なリフォームの可能性も考慮した上で、最もコスパの良い選択をしましょう。
敷地調査と地盤調査を行う
敷地調査と地盤調査は、その土地にどんな家が建てられるか調べるための調査です。建築会社が行う場合と、調査会社を手配してやってもらう場合があります。
・敷地調査
土地によっては建ぺい率や、建物の形状や高さが制限されることがあります。そのため敷地調査による土地の条件や方位、大きさ、道路の位置や周りの建物との兼ね合いなどの調査が必要です。また、電気やガス、水道、敷地にかかる各種法規制などを調査して、敷地の現状を細かく把握します。
主な調査内容として、敷地の測量による隣地との高低差の確認、建築基準法や都市計画法による制限の有無の確認、その土地の地目の確認などがあります。
・地盤調査
家を支える地盤の強度を調べるための調査です。上に建物を建築できるだけの強度がある土地か調査し、結果次第で地盤改良工事などが必要となることもあります。
ただし、地盤調査を行ってもなお、地盤のトラブルで住宅に問題が発生することがあるため、建物や地盤の修復費用を保証する「地盤保証」に加入している建築会社を選びましょう。地盤保証は地盤保証機関に加入している建築会社を選ばないと利用できません。
アイ・ランドは地盤保証に加入しているため、万が一のときも安心です。
建物を請負契約する
注文住宅の建築は、建物の建築工事請負契約を交わしてから行われます。本契約とも呼ばれるもので、間取りやプランが正式に決定し、本見積後に行う契約です。代金の金額や支払い方法、工事着手~完了の時期、引き渡しまでが記載されています。
契約を交わす際には、内容を把握し、不利な条件が書かれていないか確認することが大切です。特に工事完了の期日や引き渡し日、代金支払いのタイミングや違約金の取り決めなども明確にしておきましょう。
また、このタイミングで瑕疵保証保険にも加入する必要があります。住宅瑕疵担保責任保険とは、建てた注文住宅に欠陥があった場合に、損害を補填してもらえる保険です。
住宅ローンを申し込む
住宅ローンの申し込みをする際には、金銭消費貸借契約を交わす必要もあります。金融機関から購入費用を借り、将来にわたって一定期間、一定の利息を付けて返済する契約です。借入額や金利、金利のタイプ、返済期日など、詳細は金銭消費貸借契約書に記載されています。
また、住宅ローンを組む際には、抵当権設定も行うことになります。抵当権の設定を決め、行使される条件などを取り決めたものが抵当権設定契約書です。抵当権の設定は法務局で行います。
それ以外にも、保証委託契約書、金利に関する特約書などの契約書を交わし、住宅ローンの申し込みを行います。
着工~お引渡し
着工から引渡しまでの期間は、概ね4カ月ほどとなります。その間には、地鎮祭、上棟式、建物が完成した後の竣工検査があります。
着工から竣工までは、工事を進めながら現場で何度も打ち合わせを行い、建築会社、大工さんと信頼関係を築いていくことが大切です。工事自体は基本的に建築会社や現場の大工さんにおまかせですが、密に連携しておくことでその後の不具合や問題点が見つかった時の対応が変わることがあります。
竣工検査では目立った汚れや傷、設備の不具合などをチェックします。水回りや電気、コンセントの位置、建具類の動作など、生活していく上で問題がないかがポイントです。施主の方が分かる範囲でチェックすればよいのですが、不安がある場合には第三者の専門家に立ち会ってもらうことも可能です。
【土地あり・土地なし別】注文住宅が建つまでの流れ
注文住宅建築の流れは、土地がある場合と、土地がなく一から探す場合で異なります。それぞれのケースで必要となる工程を簡単にチェックしておきましょう。
土地なしの場合
土地なしの場合には、土地を購入するための計画や予算組みが必要です。土地を選べるため、どこに住みたいか、エリアや広さ、周囲環境などもイメージすることから始めます。土地なしで一から注文住宅を建築する際の流れは以下の通りです。
- 予算・住みたい場所・住宅のコンセプトをイメージしておく
- 住宅について勉強する
- 土地を探す
- 自分のコンセプトにあった建築会社を探す
- 建物の間取り・総予算を決める
- 住宅ローンの仮審査
- 土地の購入申し込みをする
- 土地の契約をする
- 敷地調査と地盤調査を行う
- 住宅のプランを決める
- 建物を請負契約する
- 住宅ローンを申し込む
- 着工~お引渡し
土地ありの場合
土地ありで注文住宅を建築する方は建て替えの場合が多く、更地に建てることは最近はあまりありません。そのため、土地探しの必要がないかわりに、取り壊しが必要なことがあります。
現在の住まいを建て替える場合、仮住まい探し、引っ越し、解体に約1ヶ月必要です。そのため、引き渡しまで期間は土地なしの場合とあまり変わらなくなります。
しかし、更地の土地を持っている場合には、土地探しも解体も必要ないため、約1カ月ほどは短縮できる可能性があります。更地の土地があるケースでは以下のような工程を踏むことになるでしょう。
- 予算・コンセプトをイメージしておく
- 住宅について勉強する
- 自分のコンセプトにあった建築会社を探す
- 建物の間取り・総予算を決める
- 住宅ローンの仮審査
- 敷地調査と地盤調査を行う
- 住宅のプランを決める
- 建物を請負契約する
- 住宅ローンを申し込む
- 着工~お引渡し
注文住宅を建てる流れを理解してコンセプトに合った住宅を建築しよう
注文住宅は、自分たちの希望が詰まった住宅を自由に建てられることが最大の魅力です。家族全員が満足いく住まいにするために、必要な手順をきちんと踏み、コンセプトにあった住宅を建てましょう。
また、建築会社によって予算内で建てられる住宅が絞られるため、建築会社の選択は重要です。設備や保証の選択肢が多く、自分たちの希望に沿った設計に対応してくれる建設会社を選びましょう。