パッシブデザインとは?手法、メリット・デメリット、間取りについて

アイ・ランドが提供している快適な住まいの形「A-Smart2030」では、夏は涼しく、冬は暖かく過ごせるパッシブデザインを採用しています。パッシブデザインは、エアコンをできるだけ使わずに、自然の力を最大限に利用して快適な住環境を実現するシステムです。

パッシブデザインとは?

パッシブデザインとは、太陽光や風などの自然の力を取り入れ、エアコンの使用を抑えても快適に過ごせる住宅のデザインです。

「パッシブ」は「受動」という意味で、パッシブデザインは「自然の恵みを受け入れる」といった意味合いを持ちます。海外で生まれた考え方ですが、日本に取り入れられてからは、各地の気候に合わせた住宅設計が行われています。

パッシブデザインの5つの手法

パッシブデザインでは、省エネルギーと快適な住環境がポイントになります。この2つを両立させるために、以下5つの手法を駆使して、太陽光や風の力を最大限に引き出します。

1.断熱

住宅における熱の流入や流失は、屋根や壁、窓からの影響によるものです。そこで、壁や窓のサッシに工夫を施すことで、断熱性を高められます。

壁の断熱性能

壁の断熱性は、単に素材を分厚くするだけでは成立しません。そのため、優れた断熱性を持った断熱材の使用、もしくは気密性を向上させる設計が必要です。

サッシの断熱性能

住宅の熱が流入・流出する場所
室内の熱が流入失しやすいのは窓であり、夏の外気熱の78%、冬の室内熱の58%は窓から流入失しています。そのため、窓サッシの断熱性能により住宅全体の断熱性を向上させることが可能です。

ちなみに、A-Smart2030では、熱を通しにくく、断熱性が高い樹脂サッシを取り扱うエクセルシャノン製の3重ガラスを採用しています。樹脂の特性とガラス間の空間で断熱できるという仕組みです。

地域ごとに推奨する断熱性能が定められていますが、エクセルシャノン製サッシは最も寒い北海道の基準にも対応しています。

2.日射遮蔽

パッシブデザインにおいて、主に夏に恩恵を受ける仕組みが、日射遮蔽です。夏の強い日差しをうまく遮蔽することで、室内に流入する熱を軽減できます。

日射を効率的に遮蔽するには、窓や窓周辺を以下のように設計します。

軒の庇の深さを調整する

夏の日射を有効に遮り、冬の日射を最大限に取り入れるためには、軒の庇の深さの調整が必要です。たとえば、8月中旬頃の太陽光は、射角70度程度で室内に射しこみます。これを遮蔽するには、軒の庇が1.2m程度必要になります。

日よけ部材を工夫する

日よけには、ブラインドやすだれ、シェードに加え、庭の植栽などさまざまな種類がありますが、特に窓の外側から日射遮蔽できるものの方が遮蔽率は高いとされています。

3.日射熱利用

夏場の日射遮蔽とは逆に、冬場は日射を最大限に取り入れて日射熱を利用し、室内の温度を高めます。

A-Smart2030では、冬至の射角30度程度の日射をどのように取り入れるかが考慮されます。

FIX窓により日射を有効に取り込む

A-Smart2030では、通常のサッシ窓に加え、開閉を行わない採光用のFIX窓を1階と2階に取り付けます。これにより、1階と2階に室温差が生まれず、どこにいても暖かく過ごせるのです。

夏は日よけになる植栽の種類

夏の日射遮蔽に役立つものの1つが植栽です。特に落葉樹は役立ちます。落葉樹は夏に葉が生い茂り、冬に葉は枯れ落ちるため、夏は日射を遮り、冬は枝の間から太陽光が射しこみます。

4.昼光を利用する

パッシブデザインは、室内の温度を快適に保つことだけではなく、室内の明るさを調整して電気の照明のコストを下げることもポイントになります。昼光を効率的に取り入れると、室内が明るくなり、昼間の照明の数を減らせます。昼光を利用する方法は以下の通りです。

リビングやダイニング、キッチンは大きな窓を2面以上作る

在宅中にいる時間が長いリビングやダイニング、キッチンには、できるだけ昼光を取り入れて明るくしたいところです。リビング・ダイニング・キッチンには、2面以上の大きな窓を設置してたくさんの光を取り込みます。

吹き抜け構造や天井のFIX窓などで導光する

住宅内に吹き抜け構造を採用して導光すれば、光を遮ることなく全体が明るくなります。また、天井にFIX窓を取り付ければ採光率がさらに上がり、照明が必要ないくらいの快適な明るさを得られます。

日光遮蔽とのバランスを考える

昼光を取り入れるにあたって、窓を設置する位置や庇の深さなどで、夏場の日射遮蔽とバランスを取る必要があります。有効に日射を遮りながらも光をできるだけ多く取り入れられる設計が重要です。

5.自然風利用

パッシブデザインでは、夏場にできるだけ涼しく過ごすために、自然の風を住宅内に取り入れる工夫も考慮します。夏場でも比較的温度が低い北風をどのように取り入れるかがポイントです。

風を取り入れやすい縦滑り出し窓の採用

A-Smart2030では、北風が入りやすい方向に縦滑り出し窓を設置することで、自然風を取り入れる設計を行っています。縦滑り出し窓は、窓の縦を軸として90度に開くことができる窓で、開いた窓が風をキャッチし、室内に風を取り込みやすい構造になっています。

吹き抜け構造は自然風利用にも役立つ

昼光利用で説明した吹き抜け構造は、明るくなるだけではなく住宅内に立体的な風通しをもたらします。たとえば、2階に滑り出し窓を設置し通気の道を作ることで、取り込んだ風が上から下に通り抜け、住宅全体に風を循環させられるのです。

風向きを考えた窓の設置が必要

自然風の利用には、地域ごとに異なる夏の風向きを考えなければなりません。周辺の建物の立地、また山地や川の位置などにより、風向きには変化が出ます。この風向き把握と、それに応じた窓の設置位置の工夫が必要です。

パッシブデザインのメリット

パッシブデザインのメリット
パッシブデザインの工夫を施した住宅は、夏・冬だけでなく、一年中快適に過ごせる点が大きなメリットです。

冬も暖かく快適に過ごせる

上記の通り、窓の大きさや庇の位置などにより、日射の熱を最大限に取り入れるだけではなく、優れた断熱性を持った屋根や壁、サッシの構造で、熱を外に逃がさない工夫がなされています。このような工夫で、住宅内のどこでも暖かく、室温差もほぼなくすことができるため、暖房に頼る比率を大幅に減らせます。

A-Smart2030は、『気圧調整型第一種換気システム「エクリア」』を採用。冬は外気を取り込んでも室内の暖かい空気と熱交換、夏はその逆の働きが起きるようになっており、夏も冬も快適な住まいを実現します。

春と秋は家の中を自然に風を通すことができる

自然光を利用し涼しい風を取り込む設計により、春や秋にも住宅内全体に快適な風を通すことができます。窓の設置方向や大きさ、吹き抜け構造などにこだわることで、自然の風を感じながら心地よく過ごせる住まいが実現します。

ちなみに、通常気圧が低いと窓やドアから外気が入り込み、それに乗って花粉やPM2.5などの有害物質も取り込んでしまいますが、A-Smart2030は、サイクロンフード・給気清浄フィルターユニット・正圧の維持という3つの技術を駆使し、花粉やウィルスなどの有害物質をシャットアウトしてくれます。新鮮で清潔、安心で心地の良い風がいつでも家の中を通ります。またエクリアでは2時間に一度、部屋の空気を入れ替えてくれます。

パッシブデザインのデメリット

一方で、パッシブデザインには多少のデメリットも伴います。十分考慮したうえで上手に取り入れましょう。

高いレベルの断熱性能が不可欠

パッシブデザインを取り入れた住宅では、高レベルの断熱性能が欠かせず、通常よりもコストがかかることは確かです。

しかし、夏や冬の空調にかかる光熱費が節約でき、太陽光や自然の風によって健康的な生活を送れることを考慮すると、長期的にはメリットの方が大きいと考えられます。

パッシブデザインだけでは家全体が温まらないことも

パッシブデザインの住宅は、室内に取り入れた熱を効率的に住宅全体に行き渡らせるように設計しますが、これがうまくいかないことがあります。

暖かい空気は上昇し、冷たい空気は下降する性質があるため、設計によっては暖かい空気が住宅内全体に行き渡らず、思った場所が暖まらない可能性もあるのです。

なお、A-Smart2030は、上記でも説明した『気圧調整型第一種換気システム「エクリア」』によってこの問題を解決しています。換気口を1ヵ所設置し、空気を圧で住宅内に送り込んで住宅内を正圧(高気圧)の状態にし、効率的な熱交換を可能にします。これにより、外から取り込んだ暖かい空気と冷たい空気が混ざり合い、冬はどこでも暖かく、夏はどこでも涼しい環境が整うのです。

パッシブデザインを意識した間取り・デザイン

パッシブデザインを意識した住宅の間取りやデザインは、いったいどのようになるのでしょうか。メインとなるのは、上記でも説明した「庇」と「吹き抜け」です。

室内に侵入する日射を遮る庇(ひさし)

「夏場は日光を入れない」「冬場は日光を入れる」

夏場に日射を遮蔽し、冬場に日射を取り入れるために重要となるのが、窓と庇のバランスです。このバランスを取るためには、南向きの窓に深めの庇をつけるのが有効な手段になります。

南側は、日光が最も入りやすい方向です。そこで、南向きの窓から入る日光を調整することで、住宅内の室温をコントロールするのです。

夏の日光の射角を高めの70度程度、冬の射角を低めの30度程度と想定して、1.2mという深めの庇をつけると、夏場の日射遮蔽、冬場の採光がどちらも実現します。

左(右)の庇で夏場の西日の侵入を防ぐ


夏場は、昼間の強い日差しだけではなく、日が沈む直前の西日を遮蔽することも大きな課題です。西日は低い角度から窓に侵入するため、室温の上昇に大きく影響します。そこで、庇の位置を西日が当たる位置に設置することで、西日の影響を最小限に抑えます。

吹き抜け


吹き抜け構造は、効率よく採光できて住宅内が明るくなるだけではなく、自然風をうまく循環させることにもつながり、快適な住環境づくりに非常に役立ちます。

また吹き抜け構造は、隣接する建物の影響で採光しにくい場合にも有効です。この場合、天井に近い位置に窓を設置すれば、上から採光することができます。隣接する建物に日光を遮られることなく、住宅内にしっかり光を取り込めるわけです。

パッシブデザインを取り入れて快適な生活を

夏も冬も、自然の力を利用して快適に過ごせるパッシブデザインの住宅。快適なだけでなく、エコな生活や光熱費の削減にもつながるため、これからさらに広がっていくと予想されます。

パッシブデザインを取り入れるには、住宅の向きや日射・風向きなどの地域性も深く関係してきます。建築士とよく相談して快適な住まいを手に入れましょう。

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